『サダコ』 (品切れ中)
(2000年7月) 著・カール・ブルックナー 訳・片岡啓治 定価:本体1500円+税
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世界にサダコを広めた名著
“原爆の子の像”のモデル・佐々木禎子さんの実話をもとにした小説。 幼いサダコは原爆投下の激しい爆風の中、紙くずのように吹き飛ばされた。しかしサダコは生き延びた。だが、10年の歳月をかけ、あの一瞬の閃光は少女の体を蝕んでいた。原爆症を発症したサダコ。病床でツルを折りながら治りたいとの願いかなわず・・・・・・。
オーストリアの児童文学作家カール・ブルックナーがロベルト・ユンクの「廃墟の光・甦るヒロシマ」に触発され、1961年に書いた渾身の作。20数カ国で翻訳され200万人以上に読まれている。世界にサダコを知らせるのに大きな役割を果たした一冊。日本語版は『サダコは生きる』(学習研究社)として1963年に出版されるもその後絶版。このまま埋もれさせてはならないと再刊したのが本書である。
★ 禎子さんをめぐる心打つ言葉を見つけました……ご紹介します。
・ 「子供たちを育てている頃、2歳で被爆、12歳の時突然発病し、折り鶴に祈りを込めながら、そのままこの世を去った少女、サダコのことを何度も思いました。13万人という死者の数を思うより、たったひとりの少女の希望や悲しみに寄り添うほうが、全ての生命を思いやることに繋がると、私は思います」(元宇宙飛行士ラッセル・シュワイカート氏のナンシー夫人の言葉)
・ (サダコが、千羽の鶴を折ることに回復の望みをたくした)そのねがいにつないで、全国から、また世界の国々から折り鶴が送られていた。ひとりの学生が、それを焼いてしまった。(注:2003年8月1日、原爆の子の像にささげられていた14万羽を超える折り鶴に、ある大学生が放火した事件を指しています) 鶴を折った人びとのなかの、ある少女を例にとります。死んだ少女を思いながら指先に注意をこめて、生きている少女が小さい鶴を折る。(中略)注意深く、小さな紙の折り目を見つめ、死んだ少女の折り鶴にたくしたねがいをなぞろうとしている少女は、もうそのままで祈っているのです。そのことを別の言葉で言えば、原爆症で死んだ少女に向けて想像力を働かせているのでもあります。他の人の痛みを、自分の肉体のこととして感じとることができるのは、ただ想像力によってのみだ、と教育について書いた『エミール』で、ジャン=ジャック・ルソーはいっています。(中略)マーティン・ハイデッガーは、人間が倫理的になる(良く生きることを考えるようになる)のは、「死すべき者であること」をさとる時だ、といいました。死んだ少女を思って鶴を折る少女も、幼いながら、生来の倫理的な性質を(私は人を殺さない、というようなことをふくめて)確かめているはず、と私は信じます。
(2004年8月10日朝日新聞 大江健三郎氏の「伝える言葉」より抜粋)
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