「小さな木の実ノート」の報道
◎何かを語りかけてくれる本 (「環境農業新聞」より抜粋)
ちょっと小さめの本を開いてみると、宝石箱の中から小さな木の実がコロコロところがり落ちてきたような本である。 素朴な木の実のにおいや暖かみがするような本で、ページをめくるとまず木の実の音符。クモやトンボ、チョウチョやバッタで音符記号を表している。また、色づかいを抑えて、とても深い。 「人はいつかこの世から去る…私も。(中略)どうか、たとえひとりぼっちになっても、希望を持って、この素晴らしい世界を強く生きていって欲しい」。 子をもつ親になったら、誰でも思う気持ちであると思う。この気持ちを詩にした「草原の秋」。 抑えぎみの深い色づかいの絵とともにあなたの胸に何かを語りかけてくれる本である。
父親の「思い」を詞に――海野洋司さんインタビュー(2003年5月26日「毎日中学生新聞」より抜粋) 「草原の秋」(「小さな木の実」のもとになった詩)が書かれたのは69年。長男が生まれ、海野さん自身が父親になったことがきっかけだ。実は海野さん自身、中学1年のときに父親を亡くしている。「怖いイメージしか残っていない」という。家でも近寄りがたい存在だった。それでも思い出は深い。 「私は小学生のころ、いじめられていたんです。ある時父に『相手を一発殴ってこい』と言われ、私はその通り学校で相手を殴りました。すると、いじめはとまりました。今考えると乱暴ですが、教育ってそういうものだと思うんです」。単なる腕力ではなく、問題に対して真正面からぶつかる父親の「強さ」を感じた。 兵庫県出身の海野さんは、小さいころ、田んぼの中にあった二階建ての家の屋根に上って、六甲山など多くの山を見渡していた。特に夕暮れ時に、山の間に沈んでいく真っ赤な太陽が心に残っている。「自然と対話していた」と、海野さんは振り返る。 「今の子供たちも、ゲームばかりでなく自然と対話してほしい」と話す。 「小さな木の実」は今でも教科書に載っているため、全国の児童や生徒から歌詞についての質問や感想が海野さんのもとに届く。海野さんはすべてに目を通し、自分で返事を書くようにしている。「子供たちの意見は正直です。時にはそのみずみずしい感性に驚くこともあります」と目を細める。 「生きていることは素晴らしいこと。自分の足で歩けるようになってほしい」。海野さんはメッセージを送る。(村社拓信記者)
◎童謡のすばらしさ 世界に届けよう 〜大庭照子さんら「小さな木の実」歌う (2003年12月8日「毎日小学生新聞」第一回「小さな木の実コンサート」(2003年横浜市立西公会堂)公演記事より抜粋)
「小さな木の実」は三十二年前、“NHKみんなの歌”で大庭照子さんの歌がヒットし、以来何度も再放送され、音楽の教科書にも取り上げられている歌です。(中略)青木少年少女合唱団とヨコハマサーティーフォーが「小さな木の実」を歌って大庭さんを迎えました。大庭さんを中心に、この歌を作詞した海野洋司さんによる「草原の秋」の朗読などがありました。この詩ができた背景は昨年NHKの「そして歌は誕生した」という番組で初めて明かされ、「小さな木の実ノート」(よも出版)という絵本にもなりました。 大庭さんはこの歌がきっかけとなって三十二年間全国でスクールコンサートを続けています。今まで訪れた学校は2500校にも上ります。 子どもたちの心の引き出しに美しい童謡をたくさん入れたいと願う大庭さんは十年前、熊本県阿蘇の大自然の中にNPO法人日本国際童謡館を作りました。童謡のすばらしさを阿蘇の風にのせて全国に、世界に広げたいという夢の実現です。その童謡運動の風を神奈川県の人たちが受け止めて今回のコンサートが開かれたのです。
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